補助金と助成金の違いとは?2026年の制度一覧と、資金繰りを悪化させない選び方

IT化 に取り組む中小企業の経営者

「補助金って、うちみたいな小さい会社でも使えるんですか? というか、助成金と何が違うんですか。」

これ、あなただけではありません。むしろ、年商数億円の会社の社長さんからも普通に出てくる質問です。

そして、この「違いがわからない」という状態のまま動くと、取れるはずのお金を取り損ね、取らなくていいお金のために数十時間を潰すことになります。今日は、2026年7月現在の制度を並べながら、「もらえるか」ではなく「資金繰りにいつ効くか」という目で整理してみます。

補助金と助成金の違い——そもそも別の生き物です

一言で言えば、助成金は「要件を満たせばもらえる」、補助金は「審査で選ばれないともらえない」です。

助成金の多くは厚生労働省の管轄です。たとえばキャリアアップ助成金は、企業が納めている雇用保険料(雇用保険二事業)を財源としています。一方、業務改善助成金のように最低賃金制度と紐づく制度は一般会計から支出されており、財源は一様ではありません。共通しているのは「条件を満たした会社には原則支給する」という設計思想のほうです。だから成否を分けるのは作文力ではなく、就業規則や賃金台帳が整っているか、という地味な実務になります。

一方の補助金は主に経済産業省・中小企業庁系。予算の上限があり、審査で採択・不採択が決まります。金額は大きいけれど、取れるかどうかは確率の問題です。

つまり、助成金は「やるかやらないか」の意思決定、補助金は「割に合うか」の期待値計算なのです。この性質の違いを知っているだけで、動き方が変わります。

では、いま実際に動いている制度は?

2026年7月時点で、中小企業が現実的に狙える主なものを並べます。

制度名 規模感 いまの状況(2026年7月21日時点) こんな会社向き
中小企業省力化投資補助金(一般型) 補助率1/2(「最低賃金引上げ特例」で2/3)。上限は従業員規模で変動し、101人以上は8,000万円(「大幅賃上げ特例」で最大1億円) 第7回公募。7/31 17:00締切(受付中)、採択は11月中旬予定 人手不足を設備で埋めたい製造・建設・飲食
同(カタログ注文型) 小口・カタログから選ぶだけ 随時受付 初めての一手。作文不要が大きい
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠 最大2,500万円(特例3,500万円)/新事業進出枠・グローバル枠 最大7,000万円(特例9,000万円) 第1回公募。8/31受付開始〜9/30 18:00締切。※旧「ものづくり補助金」は第23次(5/8締切)で終了し統合 新製品開発・新市場進出・輸出体制の強化
デジタル化・AI導入補助金2026 中口 第3次締切(7/21)は終了。第4次締切 8/25 基幹システム・AIツール導入
事業承継・M&A補助金 中〜大口 十五次公募 7/24締切(締切間近) 後継者問題・事業譲受
業務改善助成金 最大600万円。助成率は事業場内最低賃金1,050円未満で4/5、1,050円以上で3/4 令和8年度は 9/1受付開始。賃金引上げ額は50・70・90円の3コースに再編 最低賃金付近の従業員がいる会社
キャリアアップ助成金(正社員化) 1人最大80万円(※重点支援対象者を有期→正規にした場合。通常の対象者はこれより低い) 通年、継続実施 パート・契約社員を正社員化する会社

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

※2026年7月21日時点の公表情報です。公募期間・要件・上限額は頻繁に変更されますので、必ず各制度の公式サイトで最新をご確認ください。補助金は中小企業庁およびミラサポplus、助成金は厚生労働省の各ページが一次情報です。

ここで一つ、見落とすと痛い変化があります。長年「中小企業の設備投資といえばこれ」と言われてきたものづくり補助金は、2026年5月の第23次をもって公募を終了しました。現在は新事業進出補助金と統合され、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」として動いています。名前だけの変更ではなく、枠組みも上限額も変わっています。昨年の感覚のまま「ものづくり補助金で設備を」と考えている社長は、まずここを更新してください。

そしてもう一つ。こうして並べると、金額の大きさと、手元の現金への優しさは、まったく一致していないことに気づきます。

なぜ「大きい補助金」ほど資金繰りを苦しくするのか?

ここが本日の核心です。

補助金はほぼすべて後払い(精算払い)です。交付決定をもらい、発注し、支払いを済ませ、実績報告を出し、審査を経て、数ヶ月後にやっと入金される。つまり補助金の金額が大きいほど、先に出ていく現金も大きい。

補助金が入金されるまでの流れ(自己資金で立て替える期間)

  1. 申請・採択
  2. 交付決定
  3. 発注・支払い ← ここから立替が始まる
  4. 実績報告
  5. 審査
  6. 入金 ← ここでようやく立替が終わる

3〜6の期間、設備代や外注費は自社の財布から出ていきます。数ヶ月から1年近く。補助金の金額が大きい制度ほど、この谷は深く、長くなります。

上限1億円の補助金は、裏を返せば「2億円を先に立て替えられますか」という問いです。しかもその1億円は、従業員101人以上かつ「大幅賃上げ特例」を満たした場合の最大値。多くの中小企業にとっての現実的な上限は、もっと手前にあります。この問いに即答できないまま申請書を書き始めるのは、順番が逆です。

ちなみにこの制度には、名前の似た特例が2つあります。補助率を1/2から2/3に引き上げるのは「最低賃金引上げ特例」——最低賃金付近で雇用している従業員が一定割合いる会社が対象です。一方、補助上限額を250〜2,000万円上乗せするのが「大幅賃上げ特例」。要件も効果も別物です。「賃上げすれば全部良くなる」という理解のまま資金計画を組むと、後で数字が合わなくなります。

だから実務では、採択を目指すのと並行して、入金までの穴を埋める「つなぎ融資」を段取りします。どこまで借りていいかの判断軸は、「いくらまでなら借りていいか?中小企業の借入適正額を3つの軸で判定する方法」で解説しています。日本政策金融公庫や信用保証協会付き融資で対応するケースが多いのですが、ここで注意すべきは金利環境が変わったことです。かつて「1〜3%程度」と言われた水準は過去のもので、2026年の公庫の基準利率は中小企業事業でおおむね年2%台後半から、国民生活事業の無担保では年3〜5%台に達することもあります。担保の有無と制度で大きく振れると考えてください。

さらに、申込みから実行まで3週間〜1ヶ月程度は見ておく必要があります。このリードタイムを知らずに、交付決定後に慌てて銀行に駆け込む社長が本当に多い。

逆に、カタログ注文型のような小口の制度は、立替額も小さく、随時受付で、作文の手間も軽い。金額は地味でも、キャッシュに対するダメージが小さいだけで、中小企業にとっては十分に合理的な選択肢です。

お金は、金額ではなくタイミングで困る。これが資金繰りの鉄則です。

採択率が低い補助金に、応募する価値はある?

Q. 採択率が30%の補助金。応募すべき?

これは感覚ではなく、簡単な掛け算で判断できます。

補助金1,000万円、採択率30%なら、期待値は300万円。一方で、申請にかかるコスト(社長と幹部の時間、支援会社への着手金)が合計50万円相当なら、期待値は十分にプラスです。応募するべき。

では、同じ補助金でも採択率が10%、且つ社長が1ヶ月、営業を止めて書類に向き合うならどうか。期待値100万円に対して、失う売上はそれ以上かもしれない。このとき、正しい答えは「応募しない」です。

もっとも、この掛け算がすべてではありません。申請書を書く過程で事業計画が整理される、金融機関に見せる資料が一本できる——そうした副産物に価値がある局面もあります。ただ、それを言い訳にして毎回応募していては本末転倒です。金額×確率−コストで一度並べてみるだけで、応募すべき制度は驚くほど絞られます。徹底的に考えてから動く。この順番を守る会社は、補助金で痛い目に遭いません。

助成金は「もらい得」なのか?

Q. 正社員化で80万円。やらない理由がないのでは?

ここに、もう一つの落とし穴があります。

まず、この80万円という金額自体に条件があります。キャリアアップ助成金の正社員化コースで中小企業が1人あたり80万円を受け取れるのは、「重点支援対象者」を有期雇用から正規に転換した場合。雇用期間3年以上の有期雇用労働者、長く不安定な雇用が続いていた方、派遣からの直接雇用、ひとり親などが該当します。通常の対象者では支給額はこれより下がります。まず自社の対象者がどちらなのかを確認するところからです。

その上で、仮に80万円を満額受け取れたとしましょう。正社員化すれば社会保険料や賞与、退職金原資を含めた固定費が恒久的に増えます。仮に年間60万円のコスト増なら、80万円の助成金は1年4ヶ月で消える計算です。

これは「だからやめろ」という話では全くありません。その人が正社員になって定着し、粗利を生むなら、助成金の有無に関係なく正解です。問題は、逆の順序——「80万円もらえるから正社員にしよう」と考えたときです。その80万円は一度きりですが、人件費は毎月、何年も続く。

同じことが業務改善助成金にも言えます。最大600万円、助成率は事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4。令和8年度からは引上げ額が50・70・90円の3コースに再編され、9月1日から受付が始まります。これは「設備投資の補助」と見えて、実態は「賃上げとのセット商品」です。賃金は一度上げたら下げられない。

だからこそ、助成金を見るときはこう問います。

本当の手残り=支給額 − 増える固定費(年化×年数) − 増えた利益にかかる税金

この式でプラスになる、もしくはプラスにする見通しが立つなら、堂々と使えばいい。そこを見ずに金額だけを見るのが危ういのです。

結局、何から手をつければいいのか

優先順位は、意外とはっきりしています。

まず、すでにやると決めていることに当てはまる制度がないか探す。今年中に設備を入れる、パートを正社員にする、システムを入れ替える——もともとの予定に補助金を後から重ねる。これが一番失敗しない。

次に、自社の手元資金で立て替えられる金額の上限を先に知る。これを知らないと、どの制度を見ても判断できません。逆に知っていれば、制度一覧の半分はその場で候補から外せます。

そして、採択を目標にしない。目標は、その投資で売上と粗利がどれだけ動くかです。補助金はその背中を押す風であって、エンジンではありません。風が吹くからといって、行き先を変えるのは本末転倒です。

専門家に相談すべきなのは、どんなとき?

Q. 申請支援の会社に頼めば、全部任せられるのでは?

申請支援のプロは「採択される書類」を作るプロです。しかし、採択後の立替資金、入金までの資金繰り、受領に伴う税負担、そしてその投資が本当に手残りを増やすか——ここまで見るとは限りません。役割が違うので、それ自体は悪いことではありません。

目安として、立替額が月商の1ヶ月分を超えるとき補助対象の投資額が年間利益を上回るとき賃上げを前提とする制度を使うとき。このいずれかに当てはまるなら、申請書を書き始める前に、一度数字を並べてください。採択されることそのものより、入金までの十数ヶ月を乗り切れるかどうかのほうが、はるかに会社の存続に直結します。

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今日の記事は「補助金」の話でした。ですが。

同じ補助金を受け取っても、手残りが増える会社と、むしろ資金繰りが悪化する会社に分かれます。その差は、申請書の書き方ではありません。補助金を探すよりも先に、見ておくべき数字があります。

その違いを、1冊の資料にまとめました。

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