2026.5.7

政府が金融機関に「機械的判断をするな」と要請——中東情勢を踏まえた中小企業の資金繰りを守る3つの手

「原油高で運送費も電気代も上がりっぱなし。返済を続けながら、これ以上どこを削ればいいのか…」 「メインバンクの担当者に相談したら、明らかに身構えられた。融資判断が厳しくなった気がする…」

これ、あなただけではありません。つまり、多くの中小企業の社長が同じ不安を抱えているのです。

2026年3月27日、内閣総理大臣・財務大臣(兼金融担当大臣)・厚生労働大臣・農林水産大臣・経済産業大臣の連名で、金融機関等に対する要請文が出されました。テーマは「中東情勢を踏まえた金融上の対応について」です。

具体的には、中東情勢の影響で原油・燃料・原材料が上がり、中小企業の資金繰りが圧迫されている状況に対し、政府が官民の金融機関に「事業者にきめ細かく寄り添うように」要請したものです。

ここで重要なのは、これは「困っている事業者向けのニュース」ではなく、「使える社長」と「知らないまま消耗する社長」に分かれるサインだということ。したがって、今回は、この要請文の中身を中小企業の社長視点で読み解き、いま何が使えるのかを整理します。


政府の金融機関への要請文書と中小企業の資金繰り

なぜ今、政府は金融機関に「寄り添うように」と要請したのか?

要請文には大きく3つのメッセージが含まれています。

まず、ひとつ目は、「機械的・硬直的な融資判断をするな」という指示です。例えば、決算が一時的に悪化していても、借入残高が大きくても、それだけで融資を断るな、という金融機関への直接的なメッセージです。

次に、ふたつ目は、「セーフティネット貸付の金利引下げ対象を令和8年4月1日から拡充する」という具体策です。その結果、日本政策金融公庫等を通じて、中東情勢の影響を受ける事業者向けの特別相談窓口や金利優遇が整備されています。

さらに、三つ目は、「既往債務の条件変更や借換えの申込みを断念させるな」という強い文言です。一方で、返済が苦しい時に「リスケ=信用毀損」と思い込んでいる社長は多いですが、政府は明確に「柔軟に対応すべし」と方針を示しています。

そのため、経営の本質は、売上を上げ、経費を下げ、手元に現金を残すこと。資金繰りが厳しい局面では、「打てる手」を知っているかどうかで、確率がまったく変わります。

Q1.「セーフティネット貸付」って、うちみたいな会社でも使えるの?

A. 中東情勢の影響を受けた事業者は、新たに対象に追加される見込みです。具体的には、日本政策金融公庫の「セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)」が代表的です。例えば、売上減少や利益率悪化など、外部環境の変化で一時的に業況が悪化した中小企業が対象で、売上に関わらず、仕入れコストの上昇で利益が圧迫されているケースも含まれます。

さらに、令和8年(4月)1日からは金利引下げの対象が拡充されており、燃料費・原材料費の上昇で粗利が圧迫されている製造業・運送業・建設業・飲食業などにとって、最も使いやすい施策のひとつです。

したがって、ポイントは「赤字になってから」ではなく「粗利率が下がり始めたタイミング」で動くこと。確率的に、早く動いた会社ほど条件のいい融資を引きます。銀行員が決算書で見るポイントを事前に把握しておくことで、融資交渉を有利に進めることができます。

Q2. 返済がきつい。条件変更(リスケ)を申し込んだら、信用に傷がつく?

A. これは、多くの社長が誤解している論点です。つまり、今回の要請文では、「既往債務の条件変更や借換え等について、申込みを断念させるような対応を取らない」ことが明記されています。言い換えれば、政府は金融機関に対して「リスケ申込みを受けて当然」というスタンスを明確にしたのです。

もちろん、信用情報や格付けへの影響はゼロではありません。一方で、「返済できずに延滞する」ほうが信用への打撃は圧倒的に大きいのが事実です。そのため、手残りが減って苦しい段階で、早めに金融機関に相談するほうが、結果的に会社を守ります。

例えば、「徹底的に考えてから動く」とはこのことで、選択肢を知らずに耐えるのではなく、選択肢を全部並べた上で判断する——これが数字に強い社長の動き方です。経営計画書の作り方を見直すことも、金融機関との交渉力を高める重要なステップです。

Q3. メインバンク以外に、どこに相談できる?

A. 政府が連携を促している支援機関は、主に次の3つです。

1. 中小企業活性化協議会(各都道府県):再生計画の策定支援、金融機関との調整

2. 事業承継・引継ぎ支援センター:M&A・事業承継の相談

3. よろず支援拠点:経営相談の総合窓口(無料)

加えて、金融庁が専用の相談ダイヤルを設置予定であり、さらに経済産業省も「燃料油や石油製品等の供給に関する情報提供受付」を運営しています。

したがって、メインバンク1行だけに頼らず、複数の窓口を並行して使うのが原則です。例えば、主要取引先を1社に集中させるのが交渉で不利なのと同じで、相談先1つだけでは見える景色が偏ります。また、専門家への無料相談を活用することで、自社に最適な支援策を見つけやすくなります。

中小企業がいま動くべき3つのアクション

優先度 アクション 確認すべき数字
★★★ 月次の粗利率と手残りを把握する 粗利率の前年同月比/手元現金の月商比
★★ 取引金融機関に「相談ベース」で接点を持つ 借入残高/返済比率/金利
セーフティネット貸付や条件変更の選択肢を整理 既往債務の条件/返済元本/支援策の対象要件

まず最初に取り組むべきは、自社の数字を正確に把握することです。「本当の手残り」は、次の式で出ます。

本当の手残り = 売上 −(変動費+固定費+税金+借入金返済元本)

つまり、決算書の利益ではなく、この数字を毎月見ているかどうかが、苦しい局面で会社を守れるかの分かれ道になります。

資金繰り改善のために今日からできること

具体的には、以下の3つのステップを踏むことをおすすめします。

まず、過去3ヶ月の粗利率を月次で確認してください。前年同月と比較して、どれだけ下がっているかを数字で把握することが第一歩です。

次に、現在の借入金の返済スケジュールを一覧にまとめましょう。その結果、どの時期に資金が最も厳しくなるかが見えてきます。例えば、3ヶ月後に大きな返済が控えている場合、今のうちから金融機関への相談を始めるべきです。

さらに、上記の支援機関に連絡を取り、自社が対象となる支援策がないか確認してください。一方で、支援策は申請期限があるものも多いため、早めの行動が重要です。また、クリニック・医療法人の資金繰り改善事例など、業種別の対策も参考になります。

専門家に相談するタイミングは?

Q. 政府の支援策、自分で全部調べるのは大変。どのタイミングで専門家に相談すべき?

A. 例えば、「燃料費・原材料費・電気代などのコスト上昇で粗利率が3ヶ月連続で下がっている」場合や、「借入金の返済比率(年間返済額÷年間売上高)が10%を超えている」場合は、すぐに専門家に相談すべきタイミングです。

さらに、セーフティネット貸付や条件変更は、通る要件と書類の作り込みで結果が大きく変わります。したがって、情報量と段取りで差がつく領域なので、「思いついたとき」ではなく、90日単位で計画的に手を打つ設計にすると、成功確率が一気に上がります。

そのため、まずは無料相談を活用して、自社の状況を専門家に見てもらうことをおすすめします。一方で、相談は早ければ早いほど選択肢が広がるため、「まだ大丈夫」と思っているうちに動くことが重要です。


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OGG(オージージー合同会社):「経営を、数学にする。」をモットーに、中小企業の財務改善とマーケティング支援を行う経営コンサルティング会社。建設業・飲食業・製造業・医療業界を中心に100社以上を支援。「売上はあるのにお金が残らない」を解決します。

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