「保険が通りにくくなった。自費メニューを入れたいけど、患者さんは来てくれるのか不安。月末に通帳を見ると、売上は去年より増えているのに、なぜか手元にお金が残らない。」
これ、整骨院・接骨院を経営する先生方から、本当によく聞く悩みです。 実は2022年以降、柔道整復療養費の審査は格段に厳しくなり、保険者から「白紙署名」「複数部位請求の妥当性」を問われるケースが急増しています。さらに、3部位目以降は算定が逓減する仕組みもある。
「保険を増やす」戦略は、構造的に手残りが伸びにくくなっているのです。 一方で、自費メニューで月商を1.5倍にしている院も実在します。違いは何か。本記事では、整骨院経営の「知らないと損する5つの数字」を公開します。
目次
なぜ来院数を増やしても手残りが減ることがあるのか?
整骨院業界で意外と知られていないのが「3部位目以降の逓減制」です。柔道整復療養費は1部位目100%、2部位目100%、3部位目80%、4部位目以降60%と算定が下がります。
複数部位の請求でカバーする戦略は、構造上、想像ほど売上を押し上げません。 加えて、ベッド数と施術時間に物理的な上限がある「箱物ビジネス」である以上、患者数を増やしても、1人あたり単価が低いままでは手残りは伸びません。
これが、来院数50人/日でも手残りが数十万円のままになる構造的理由です。 経営の本質はシンプルで、「売上を上げるか、経費を下げるか」しかありません。整骨院の場合、経費の大半(家賃・人件費)はすぐ下げられない。だから、単価を上げる打ち手が、最も売上インパクトが大きいのです。
整骨院経営で本当に見るべき「知らないと損する3つの数字」とは?
多くの院長先生が「来院数」「売上」を毎日チェックしますが、これだけでは経営は良くなりません。本当に見るべきは次の3つです。
1. 自費メニュー率(=自費売上 ÷ 総売上) 30%が損益分岐点。10%と40%では月間手残りが2倍以上変わります。
2. 3回継続率(=3回以上来院した患者数 ÷ 新規患者数) これが最も知られていない指標です。整骨院では新規患者の60〜70%が「3回以内に離脱」します。逆に3回を超えた患者の継続率は急上昇する。新規集客より「3回目をどう超えさせるか」が、実は売上の鍵を握っているのです。
3. LTV(顧客生涯売上) 保険メイン院で15,000〜25,000円、自費比率40%超の院で50,000〜80,000円。LTVを知らずに広告費を決めると、ほぼ確実に赤字になります。 スタッフ3名の整骨院で、自費メニュー率18%→42%、3回継続率35%→58%に改善したところ、月間手残りが2.1倍になりました。患者数は1割しか増やしていません。「数字の構造」を変えただけの結果です。
Q. 自費メニューはいくらに設定すべきですか?
A. 中途半端な「2,000〜3,000円帯」が、最も失敗しやすい価格帯です。 意外に思われるかもしれませんが、価格設定には心理バイアスが働きます。2,000〜3,000円の自費メニューは「保険診療の延長」と認識され、「いつでもやめていいもの」扱いされて継続率が下がります。
逆に6,000〜8,000円帯は「特別な施術」として認識され、患者さんが「効果を出すまで通おう」という心理になりやすい。LTVで見ると、6,000円帯の方が3,000円帯の2倍以上になることもあります。 ただし、いきなり高単価にするのではなく、既存患者のカルテ3ヶ月分を見直し、「保険適用外で相談を受けた症状」から逆算してメニュー設計してください。徹底的にデータを見てから動く。これが、失敗しない自費導入の鉄則です。
Q. 紹介を増やすには、いつ声をかければいい?
A. 「6回目前後の来院時」が、最も紹介を生みやすいタイミングです。 これは現場で見落とされがちなポイントです。1〜2回目は「効くか分からない」、10回目以降は「もう治ったから」と紹介の心理が働きにくい。
6回目前後は「効果実感が最大化されるタイミング」で、患者さんが家族や同僚に話したくなる時期と一致します。 具体的には、5〜7回目の来院時に「最近、症状で困っているお知り合いはいませんか?」と一言かけるだけで、紹介率は2〜3倍変わります。
受付スタッフのトークスクリプトに組み込むだけで、広告費ゼロで新規が増える仕組みになります。 これは「売上にインパクトがあるかどうか」の視点で打ち手を選んだ典型例です。広告にお金を使うより、既存の流れに小さな仕組みを差し込むほうが、確率的にリターンが高いのです。
Q. 物販(インソール・サポーター)は経営に効きますか?
A. 「物販の粗利率60〜70%」は、整骨院経営で最も見落とされている収益源です。 意外に知られていないのが、物販は施術と違って人件費がかからないということ。
施術売上は人件費を引くと粗利20〜30%ですが、物販は60〜70%残ります。 具体的には、月10万円の物販売上は、施術1日分(朝から晩までの全枠分)の手残りに匹敵します。
インソール、姿勢サポーター、寝具など、施術効果を補完する商品を数点置くだけで、月15〜30万円の手残り増加が見込めます。 ただし、ノルマ営業のような押し売りは禁物。「症状に合うものだけ提案する」スタンスが、信頼を維持しながら粗利を取る、合理的に最適なバランスです。
Q. 広告費はいくらまでかけていい?
A. 「LTV ÷ 3」が広告費の上限の目安です。 LTVが20,000円の院がCPA(新規1人あたり広告費)8,000円の広告を打つと、ほぼ赤字。逆にLTVが60,000円ならCPA15,000円でも回収可能です。 「うちは広告費に5,000円までしか出せない」と決めつける前に、まず自院のLTVを計算してください。順番を間違えると、売上は増えても手残りは減ります。広告は「数字の順番」で打つもの。感覚で打つと、負けます。
整骨院の手残りを増やす5つの数字管理
| 指標 | 業界平均 | 改善目標 | インパクト |
|---|---|---|---|
| 自費メニュー率 | 10〜15% | 30〜40% | 月間手残り×2倍 |
| 3回継続率 | 30〜40% | 55〜65% | LTV×1.8倍 |
| 紹介率 | 5〜10% | 20〜30% | CPA50%削減 |
| 物販売上比率 | 0〜3% | 8〜12% | 月間手残り+15〜30万円 |
| LTV | 15,000〜25,000円 | 50,000円以上 | 広告投資余力3倍 |
「本当の手残り」=売上 − 経費 − 税金 − 借入返済。この式を意識せず売上だけを追うと、どれだけ患者数が増えても経営は苦しくなります。数字を分解し、打ち手の優先順位を決めることが、経営者にとって最大の武器です。
Q. これら全部を自分で管理できますか?
A. 「集計は自分で」「経営判断は専門家と」が、最も確率的に成功する分担です。 5つの指標を毎月集計する仕組みは、Excelで30分あれば作れます。一方、「うちの院の適正な自費比率はどこか」「投資の優先順位はどうすべきか」「広告と人件費のバランスは」といった経営判断は、業界データと財務視点の両方が必要で、独学では見落としが必ず出ます。 一人で悩み続けるより、まずは自院の数字を客観的に診断することから始めてください。
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