製造業の利益率が低い原因
「受注は順調。現場も忙しい。なのに、なぜか手元にお金が残らない。」
製造業の経営者から、この相談を繰り返し受けてきました。
経済産業省の「工業統計調査」によると、中小製造業の営業利益率は平均3〜4%。売上1億円の会社でも、手元に残る利益は300〜400万円しかありません。
「忙しいのに儲からない」製造業に共通する特徴があります。それは「原価を正確に把握していない」こと。
材料費はいくらか。1個あたりの加工時間は何分か。外注費は売上の何%か。この3つをパッと答えられない経営者は、利益が漏れている可能性が高いです。
この記事では、製造業の利益率が低い原因を「数字」で突き止める方法と、明日から使える改善策を解説します。
目次
製造業の利益は「見えないコスト」に食われている
製造業の利益を圧迫する最大の原因は、「見えないコスト」です。
材料費は請求書があるからわかる。外注費も支払い明細がある。でも、自社の加工にかかるコスト(加工賃)を正確に計算している会社は、驚くほど少ないのが現実です。
たとえば、従業員10人の金属加工会社の場合:
人件費(給与+社会保険料):月500万円 稼働日数:月22日 × 8時間 = 176時間 × 10人 = 1,760時間 1時間あたりの人件費:約2,840円
ここに工場の家賃、光熱費、設備の減価償却費、消耗品費を加えると、実際の1時間あたりのコスト(チャージレート)は4,000〜5,000円になることが珍しくありません。
問題は、このチャージレートを把握せずに見積もりを出している会社が多いことです。
「材料費+外注費+なんとなくの利益」で見積もりを作り、加工時間が予定より長くなっても気づかない。結果、受注するたびに少しずつ利益が削れていく。
これが「忙しいのに儲からない」の正体です。
「技術力が高い」だけでは利益が出ない本当の理由
製造業の経営者には、技術者出身の方が多い。だから「良い製品を作れば仕事は来る」と考えがちです。
でも、ここに大きな落とし穴があります。
「お客さんが求めている品質」と「自分が追求したい品質」は違うということです。
技術者として「もっと精度を上げたい」「もっと良い仕上げにしたい」と思う気持ちはわかります。でも発注元の多くは、図面通りの精度が出ていれば十分。それ以上の品質を求めていないケースが多いのです。
結果として何が起きるか。
品質にこだわる → 加工時間が長くなる → 1個あたりの原価が上がる → 利益率が下がる
これは「技術力の問題」ではなく、「原価管理の問題」です。
一般的に、製造業の原価構成はこうなります:
| 原価項目 | 売上に対する目安 |
|---|---|
| 材料費 | 30〜40% |
| 外注費 | 10〜20% |
| 労務費(加工賃) | 20〜30% |
| 経費(家賃・光熱費等) | 10〜15% |
| 営業利益 | 3〜10% |
利益率が3%を切っている場合、どこかのコストが目安を超えています。
ここで重要なのは、全体の平均ではなく、製品・案件ごとの原価を把握することです。
「A社の仕事は利益率15%だが、B社の仕事は実はマイナス5%だった」という発見は珍しくありません。利益が出ている案件で、赤字案件を穴埋めしている状態では、いくら忙しくても会社にお金は残りません。
「受注が減った」と感じた時に最初にやるべきこと
受注が減ったと感じた時、多くの経営者は「営業を強化しよう」「値段を下げよう」と考えます。
でも、まず確認すべきは「既存取引先の発注が減っているのか、新規の引き合いが減っているのか」です。
この2つは、対策がまったく違います。
既存取引先の発注が減っている場合:
- 取引先の業績や生産計画の変化を確認する
- 品質・納期・対応に不満がないか直接聞く
- 競合に仕事が流れていないか情報を集める
- 取引先の新製品や新プロジェクトの情報を早めにキャッチする
新規の引き合いが減っている場合:
- 自社の強み(設備・技術・対応力)をWebで発信する
- Googleビジネスプロフィールに設備情報と加工実績を掲載する
- 展示会や業界紙への露出を検討する
- 既存取引先からの紹介を仕組みとして依頼する
「受注を増やす」という漠然とした目標ではなく、既存なのか新規なのかを分けるだけで、打ち手の精度がまったく変わります。
「値下げ」ではなく「見積もりの精度」を上げる
材料費も人件費も上がり続けています。でも、取引先から値下げ要請が来る。断ったら仕事を失うかもしれない。
その気持ちはよくわかります。でも実は、値下げに応じるかどうかの前に、やるべきことがあります。
やるべきこと① チャージレートを正確に計算する
自社の1時間あたりのコスト(人件費+経費)を把握する。これがないと、見積もりの根拠がなく、値下げ交渉にも対応できません。
やるべきこと② 案件ごとの実際の加工時間を記録する
見積もり段階で「3時間」としていた加工が、実際には「5時間」かかっていないか。このズレを記録するだけで、利益が漏れている案件が見つかります。
やるべきこと③ 赤字案件を特定して対策する
すべての案件が等しく利益を生んでいるわけではありません。赤字の案件を見つけ、「単価を上げる交渉をするか」「工程を見直すか」「場合によっては断るか」を判断します。
この3つを実行すると、「値下げに応じるしかない」ではなく、「この案件は原価がこうだから、ここまでなら対応できる」と根拠を持って交渉できるようになります。
数字の裏付けがある交渉は、取引先からの信頼にもつながります。
やるべきことは「8割」でいい。まず始めることが大事
製造業の経営者は、真面目で完璧主義の方が多い。だからこそ「全製品の原価を出してから」「設備の稼働率を全部記録してから」と考えて、結局動けないケースをたくさん見てきました。
その完璧主義が、一番の敵です。
まずやるべき「2割」はこれです:
- 売上上位10案件の原価だけ計算する(全案件は後でいい)
- 今月のチャージレートだけ計算してみる(年間の分析は後でいい)
- 1つの案件だけ、見積もりと実績の差を記録する(全案件の記録は後でいい)
100点を目指して動けないより、60点でも今日から始める方が、3ヶ月後に圧倒的な差になります。
まとめ:利益率を「感覚」ではなく「数字」で管理する
製造業の利益率改善は、大きな設備投資や抜本的な改革ではなく、「数字を見る習慣」から始まります。
| 毎月確認する数字 | 目的 |
|---|---|
| チャージレート(時間単価) | 見積もりの精度を上げる |
| 案件ごとの利益率 | 赤字案件を発見する |
| 材料費率・外注費率 | コスト構造の変化を把握する |
この3つを毎月記録するだけで、「なんとなく利益が少ない」が「ここを直せば良くなる」に変わります。
経営を数字で見れば、打ち手は見えてきます。
Q: 製造業の利益率が低い時、最初に何を確認すべき?
A: まず「チャージレート(1時間あたりの自社コスト)」を計算してください。人件費に社会保険料を加え、工場の経費を足して、実稼働時間で割る。これがわかるだけで、見積もりが適正かどうか判断できます。ほとんどの製造業は、この数字を把握していないために利益が漏れています。
Q: 取引先から値下げ要請が来た。どう対応すべき?
A: 感覚で「受ける・断る」を判断しないでください。まず、その案件の実際の原価を計算し、値下げ後でも利益が出るかを確認する。利益が出るなら受ける、出ないなら根拠を示して交渉する。数字に基づいた対応は、取引先からの信頼にもつながります。
Q: 製造業経営で一番大事な数字は?
A: 「売上」ではなく「案件ごとの利益率」です。売上1億円でも赤字案件が多ければ手元にお金は残りません。上位10案件の利益率を把握するだけで、どこに問題があるかが見えてきます。
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