「味には自信がある。お客さんも満足してくれている。なのに、なぜか手元にお金が残らない。」
飲食店の経営者から、この相談を何度も受けてきました。
帝国データバンクの調査によると、2024年の飲食店の倒産件数は894件。過去最多を記録しました。2025年も上半期だけで458件と、さらに上回るペースで推移しています。
潰れていく飲食店の多くに共通する特徴があります。それは「数字を見ていない」こと。
お客さんが何人来たか。1人あたりいくら使ったか。食材原価が何%か。この3つをパッと答えられない経営者は、残念ながら危険信号です。
この記事では、飲食店の売上が上がらない原因を「数字」で突き止める方法と、明日から使える改善策を解説します。
目次
飲食店の売上は「3つの数字」の掛け算でしかない
飲食店の売上を分解すると、実はとてもシンプルな計算式になります。
売上 = 客数 × 客単価 × 来店頻度
「売上を上げたい」という漠然とした目標では、何をすればいいかわかりません。でも、この3つのどれが足りないのかがわかれば、やるべきことは明確になります。
たとえば、月商300万円の居酒屋の場合:
客数:月1,000人(1日約33人)× 客単価:3,000円 = 月商300万円
この店が月商350万円にしたいなら、選択肢は3つ。
- 客数を1,000人→1,167人に増やす(1日あたり+5〜6人)
- 客単価を3,000円→3,500円に上げる(1人あたり+500円)
- 来店頻度を上げる(月1回の常連を月2回にする)
どれが一番現実的か? 答えは店によって違います。でも「どれを選ぶか」を決められるのは、数字を把握している経営者だけです。
「味が良い」だけでは売上が上がらない本当の理由
飲食店の経営者には、料理人出身の方が多い。だから「味を良くすれば客は来る」と考えがちです。
でも、ここに大きな落とし穴があります。
「お客さんが求めているもの」と「自分が極めたいもの」は違うということです。
料理人として「もっと良い食材を使いたい」「もっと手間をかけたい」と思う気持ちはわかります。でもお客さんの多くは、そこまでの違いを判別できません。むしろ「この値段で、この雰囲気で、この味なら満足」というバランスで評価しています。
結果として何が起きるか。
味に自信がある → 原価を惜しまない → 原価率が40%を超える → 売上はあるのに利益が出ない
これは「売上が上がらない」問題ではなく、「利益が残らない」問題です。そして多くの場合、自分の店の原価率を正確に把握していないことが根本原因です。
一般的に、飲食店の原価率の目安は30%前後。ただしこれは業態によって異なります。
| 業態 | 原価率の目安 |
|---|---|
| 居酒屋 | 28〜35% |
| ラーメン店 | 30〜35% |
| カフェ | 24〜30% |
| 焼肉店 | 35〜40% |
| 寿司店 | 40〜45% |
原価率が目安を5%以上超えているなら、メニューの見直しが必要です。
ここで重要なのは、全メニューの平均ではなく、メニュー単品ごとの原価率を出すこと。
「看板メニューの刺身盛りが原価率55%だった」という発見は珍しくありません。それ自体は悪いことではありませんが、他のメニューで利益を取れていなければ、お店全体が赤字構造になります。
完璧な一皿を追い求めるよりも、メニュー全体の収益バランスを設計することの方が、経営では重要です。
「客数が足りない」と感じた時に最初にやるべきこと
客数が少ないと感じた時、多くの経営者は「広告を出そう」「SNSを頑張ろう」と考えます。
でも、まず確認すべきは「新規のお客さんが来ていないのか、リピーターが減っているのか」です。
この2つは、対策がまったく違います。
新規が足りない場合:
- Googleマップ(Googleビジネスプロフィール)の情報を充実させる
- 口コミを増やす(来店時にお願いする仕組みを作る)
- 近隣へのチラシ配布(半径500m以内が効果的)
- ランチ営業で新しい客層にリーチする
リピーターが減っている場合:
- 来店後のフォロー(LINE公式アカウント等)
- 来店3回目までの接点を意識する(3回来た客はリピーターになりやすい)
- 季節メニューや限定メニューで再来店の理由を作る
- 単純に「味やサービスの質が落ちていないか」を確認する
「客数を増やす」という漠然とした施策ではなく、新規なのかリピートなのかを分けるだけで、使うお金も時間も効率が全く変わります。
繁盛店を「真似する」のは恥ずかしいことではない
売上に悩む飲食店の経営者に、1つ伝えたいことがあります。
うまくいっている店を分析して、良いところを取り入れるのは、経営の基本です。
これは「メニューをパクる」とか「内装を真似する」という話ではありません。大事なのは「なぜその店が繁盛しているのか」という構造を理解することです。
たとえば、近所に流行っている居酒屋があるとします。そこで見るべきは「何を出しているか」ではなく、こういったポイントです。
- 客層は誰か?(会社員のグループ?カップル?一人客?)
- 客単価はどのくらいか?(メニューの価格帯を確認する)
- 回転率はどうか?(席数と営業時間から推測できる)
- リピート施策は何をしているか?(LINE、スタンプカード等)
- 口コミで何が評価されているか?(Googleマップのレビューを読む)
繁盛している店には必ず理由があります。味だけで繁盛している店は、実はほとんどありません。立地、価格設定、メニュー構成、導線、口コミ戦略。これらが噛み合って、初めて「繁盛」が生まれます。
自分の店に足りないものは何か。それを知る最短の方法は、うまくいっている店を数字の視点で分析することです。
客単価を「値上げ」以外で上げる3つの方法
原材料費も人件費も上がり続けています。でも、値上げは怖い。お客さんが離れるかもしれない。
その気持ちはよくわかります。でも実は、「値上げ」しなくても客単価を上げる方法があります。
方法① メニュー構成を見直す 利益率の高いメニュー(ドリンク、サイドメニュー)を頼みやすい位置に配置する。メニュー表の左上と右上は最も目が行く場所です。ここに利益率の高い商品を置くだけで、注文構成が変わります。
方法② セットメニュー・コースを用意する 単品で頼むと2,500円のところ、コースにすると3,500円。お客さんは「お得感」を感じ、お店は客単価が上がる。両方にメリットがある設計です。
方法③ 「もう一品」の声かけを仕組みにする 「デザートいかがですか?」の一言で、客単価は300〜500円上がります。ここで大事なのは、これをスタッフ個人のセンスや意欲に任せないこと。タイミングとセリフを決めて、誰がやっても同じ結果が出る仕組みにするのがポイントです。
「スタッフの接客力を上げよう」と考える経営者は多いですが、人の意欲に頼った改善は長続きしません。必要なのは、意欲がなくても結果が出る「仕組み」です。たとえば「メイン料理を提供してから3分後にデザートメニューを持っていく」というルールを決めるだけで、声かけ率は劇的に上がります。
これら3つはすべて「明日からできること」です。大きな投資は必要ありません。
やるべきことは「8割」でいい。まず始めることが大事
飲食店の経営者は、真面目で完璧主義の方が多い。だからこそ「ちゃんと準備してから始めよう」と考えて、結局動けないケースをたくさん見てきました。
メニューの原価率を全品計算してからじゃないと改善に着手できない。完璧なLINE公式アカウントの仕組みを作ってからじゃないと集客施策を始められない。
その考え方が、一番の敵です。
重要なのは、まず「重要な2割」から着手すること。パレートの法則(80:20の法則)で言えば、成果の8割は、たった2割のアクションから生まれます。
飲食店で言えば、まずやるべき「2割」はこれです:
- 売上上位10メニューの原価率だけ計算する(全メニューは後でいい)
- 今月の客数と客単価だけ記録し始める(複雑な分析は後でいい)
- Googleビジネスプロフィールの写真と営業時間だけ更新する(SNS戦略は後でいい)
100点を目指して動けないより、60点でも今日から始める方が、3ヶ月後に圧倒的な差になります。
まとめ:売上を「感覚」ではなく「数字」で管理する
飲食店の売上改善は、大きな投資や抜本的な改革ではなく、「数字を見る習慣」から始まります。
| 毎日確認する数字 | 目的 |
|---|---|
| 客数(新規/リピート) | 集客のどこに問題があるか特定 |
| 客単価 | メニュー構成や声かけの効果を測定 |
| 原価率(メニュー別) | 利益が出ないメニューを発見 |
この3つを毎日記録するだけで、「なんとなく売上が悪い」が「ここを直せば良くなる」に変わります。
経営を数字で見れば、打ち手は見えてきます。
Q: 飲食店の売上が伸びない時、最初に何を確認すべき?
A: まず「客数 × 客単価」を分解してください。客数が足りないのか、客単価が低いのか。さらに客数を「新規」と「リピート」に分けると、どこに問題があるかが一目でわかります。感覚ではなく、数字で原因を特定することが改善の第一歩です。
Q: 値上げしたいけど客離れが怖い。どうすれば?
A: 一律値上げではなく、まずメニュー単品ごとの原価率を計算してください。原価率の高い商品だけ見直す、セットメニューで客単価を上げるなど、お客さんに「値上げされた」と感じさせない方法はあります。実際、メニュー構成の見直しだけで客単価を500円上げた飲食店もあります。
Q: 飲食店経営で一番大事な数字は?
A: 「売上」ではなく「手元に残るお金」です。売上が月500万円でも、原価と人件費と家賃で500万円出ていけば手元はゼロ。売上・原価率・固定費の3つを毎月チェックし、「いくら残るか」を基準に経営判断をしてください。
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