建設業には、他の業種にない3つの特徴があります。
1つ目は、入金までの期間が長いこと。 建設業では、工事を受注してから代金が入金されるまで平均3ヶ月半かかります。場合によっては半年以上かかるケースもあります。
2つ目は、支払いが先に来ること。 資材費、人件費、外注費、足場代。工事が始まった瞬間からお金が出ていきます。完成して入金されるまでの間、すべて自社の資金で立て替える必要があります。
3つ目は、原価が見えにくいこと。 現場ごとの利益をきちんと把握できていない会社が意外と多い。「全体で見たら黒字だけど、実はあの現場は赤字だった」ということが起きやすいのです。
つまり、「利益」と「手元のお金」はまったく別の話です。
損益計算書(PL)が黒字でも、通帳の残高がゼロになれば会社は終わります。これが黒字倒産のメカニズムです。
目次
建設業の資金繰りを改善する「3つの数字」
難しい財務分析は必要ありません。まずはこの3つだけ、毎月確認してください。
数字① 入金サイトと支払いサイトの「差」
入金サイトとは、請求書を出してからお金が入ってくるまでの日数。 支払いサイトとは、請求書を受け取ってからお金を払うまでの日数。
この2つの「差」が、資金繰りのすべてを決めます。
計算してみてください。
入金サイト(例:90日)ー 支払いサイト(例:30日)= 差:60日
この「差」が大きいほど、お金が足りなくなります。
たとえば月の売上が1,000万円の会社で、この差が60日あると、常に約2,000万円の資金が「宙に浮いている」状態です。この2,000万円を手元資金か借入で賄わないと、会社は回りません。
改善の方法:
- 入金サイトを短くする交渉(出来高払いの導入、完成前の中間金の設定)
- 支払いサイトを伸ばす交渉(ただし協力会社との関係に注意)
- 差が60日以上あるなら、まず入金サイトの短縮から着手
数字② 現場別の粗利率
「会社全体の利益」ではなく、現場ごとの利益を見てください。
全体で粗利率25%の会社でも、現場Aは35%、現場Bは10%、現場Cは−5%(赤字)ということが起きています。
計算方法はシンプルです。
(完成工事高 − 工事原価)÷ 完成工事高 × 100 = 粗利率(%)
この数字を全ての現場で計算することが第一歩です。
なぜこれが資金繰りに関係するのか? 赤字の現場を受けるたびに、お金を「持ち出している」からです。忙しいのにお金が減っていく会社は、ほぼ確実にこのパターンです。
改善の方法:
- 受注前に必ず原価見積もりを行う(「だいたいこのくらい」は危険)
- 粗利率20%以下の案件は受注するかどうか慎重に判断する
- 資材高騰分を価格転嫁する(建設業の価格転嫁率は全業種平均を下回る43.7%。つまり半分以上のコスト増を自社で負担している)
数字③ 月末の現預金残高÷月の固定費
最後の数字は、「あと何ヶ月持つか」です。
月末の現預金残高 ÷ 毎月の固定費(人件費+家賃+リース+返済等)= ○ヶ月分
これが3ヶ月分を切ったら危険信号。2ヶ月を切ったら緊急事態です。
建設業は入金が3ヶ月半先になることもあるのに、手元に3ヶ月分の固定費がなければ、大きな受注が決まった瞬間にお金が足りなくなります。
「仕事が増えるほど資金繰りが苦しくなる」のは、まさにこのパターンです。
改善の方法:
- まず今月末の現預金残高と月間固定費を確認する(今すぐできます)
- 3ヶ月分に満たない場合、金融機関への融資相談を先手で行う
- 利益が出ているうちに内部留保を積み上げる(「利益=手元の現金」ではないことに注意)
まとめ:3つの数字を毎月チェックするだけで変わる
建設業の資金繰り改善は、難しい経営理論ではなく「数字を見る習慣」で大きく変わります。
| チェックする数字 | 基準 |
|---|---|
| 入金サイト − 支払いサイト | 60日以内を目指す |
| 現場別の粗利率 | 20%以下の案件は要注意 |
| 現預金 ÷ 月間固定費 | 3ヶ月分以上を維持 |
この3つを毎月チェックするだけで、「なぜかお金がない」が「ここに原因がある」に変わります。
原因がわかれば、対策は打てます。
Q: 建設業の資金繰りで最初にやるべきことは?
A: まず「入金サイト − 支払いサイト」の差を計算してください。この数字が60日以上あるなら、最優先で入金条件の見直しに取り組むべきです。出来高払いの導入や、中間金の設定だけでも大きく変わります。
Q: 資金繰り表は作った方がいい?
A: はい。ただし複雑なものは不要です。「入金予定」「支払予定」「残高」の3列だけで十分です。これを日単位で管理するだけで、お金が足りなくなるタイミングが事前にわかるようになります。
Q: 黒字倒産を防ぐにはどうすればいい?
A: 利益(PL)ではなく「手元の現金(キャッシュ)」を基準に経営判断をしてください。この記事で紹介した3つの数字を毎月見るだけで、黒字倒産のリスクは大幅に下がります。
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